2010/07/9-17
万葉を描く日本画展ーvol.2
昨年立ち上げた万葉歌と日本画のコラボレーション企画が今年も。京橋界隈の参加展覧会のため初日からにぎわいをみせた。昨年のオープニングのテーマは万葉草祭りで山菜尽くし。今年は瓜食めば、から万葉瓜祭りとした。胡瓜、西瓜、干瓢、隼人瓜、ついでにマンゴーまで。画像はその顛末である。
さて、五十音順に画家ごとの一首をご紹介しよう。
池田美弥子
鎌倉の 見越しの崎の 石崩の 君が悔ゆべき 心は持たじ」巻14 3365 (東歌)訳 鎌倉の見越しの崎(稲村ガ崎)の岩が崩れるような、あなたが悔やむような、そんな心は私は持ちませんよー 東歌から稲村ケ崎を詠んだこの一首の他、沖縄の店先と雲湧く山を描いた。
織田梓
山振の立ち儀ひたる山清水酌みに行かめど道のしらなく158高市皇子尊 訳ー山吹の花が美しく飾っている山の泉を酌みに行って蘇らせたいと思うのだが、道を知らぬことよ。この他、雪に春の気配を隠らせた「眠る岡」を描いた。
越畑喜代美
高円の野辺の容花面影に見えつつ妹は忘れかねつも 大伴家持 8巻 1630 訳 高円の野辺の容花(ヒルガオ)のように、面影にばかり見えつづけて、あなたは忘れることができないよ。 もう一点は月読の歌に犬を添えた。
小松謙一
あしひきの山河の瀬の響るなべに 弓月が嶽に雲立ち渡る 柿本人麿 巻7 1088 訳:河の瀬音が高く響くにつれて弓月が嶽に雲が沸きあがって動いてゆく 小松はガラスとのコラボ作品とともに水墨の軸と扁額を描いた。
鈴木強
神奈備の山下響み行く水にかはづ鳴くなり秋と言はむとや 2162 詠み人しらず 訳 山の下を流れる水のおとに呼応するように蛙が鳴いている。秋になったのだなあ。 蛙の他、白いネズミも描き縁起の良い三作とした。もちろん額も金箔。
松谷千夏子
風莫の浜の白浪いたずらに此処に寄せ来る見る人なしに 長忌寸意吉麻呂(巻9−1673)訳:この風なしの浜辺に白波は飽きずに寄せては返している。それを見ている人の姿もないのに。軸装の海景二点の他、松を描いた。
山下まゆみ
あかきひのかたむくのらのいやはてにならのみてらのかべのゑをおもへ 會津八一 訳 茜色に染まった空の彼方を眺めていると奈良時代の人々の生活模様がみえる 万葉ぶりの歌人・會津八一の歌二首に猫を絡ませて「万葉猫」と命名した山下まゆみはただものではない。
山田りえ
夏の野の茂みに咲ける姫由理の知らえぬ戀は苦しきものぞ 巻8 1500 坂上郎女 訳 夏の野の茂みにひっそりと咲いている姫百合のように、人に知られない恋は、苦しいことです。他一点は夏草に恋の歌をかけて止まぬ恋心を草に託した。
万葉の歌は感情を豊かに歌い上げてしかも素朴に伝わる。歌とこれら絵のあいだによこたわる空間を読み取り、そこにもう一つの世界を作り上げるのは、むしろ観客たるわれわれの仕事であろう。